7部は泣ける
「この物語は僕が歩き出す物語だ」
「これは『再生の物語』」
マイナスからゼロへ…過去部にそんなことをテーマにした主人公っていたかな?と。おそらく、ジョニィしかいない。
一巡後の世界におけるジョースター家は没落貴族。ジョニィはその中でも「出来損ないの弟」だった。さらに、自らの慢心から下半身付随を負い、ジョッキーとしての道も閉ざされてしまう…。
それゆえに「目的のためなら殺人でもなんでもやってやろう」という「漆黒の意思」を持っていたのだろうか。(この漆黒の意思は、1部ディオとかに近い…近くない?)
まさにマイナスからのスタート。それを一貫して描いているからか、ラストでもジョニィは優勝しないし、遺体は誰の手にも渡らない。…そこが良かった。
道中、さまざまな敵と出会うのはもちろんだけど、特に大好きだったのは「リンゴォ」かな。あとは「シビル・ウォー」と「ジャイロvsヴァレンタイン」。あ〜でも、どれも良かった!!
「vsリンゴォ」(8巻・男の世界へ)はとにかく、カッコいい。「『感傷』はお前の心の隙間に入り込み動揺を生む」。
明確な殺意を持たず、『正当なる防衛』でしか人を殺せない者だったジャイロは、ここで漆黒の意思の鱗片を学ぶ。
スティールボールランは明確な悪役が存在しない。ジョニィから見ればヴァレンタインは邪魔な悪だが、果たして本当に悪なのか? おそらく7部のテーマがこのリンゴォ戦にも現れている。リンゴォは「漆黒なる意思」による殺人が、自らを光り輝く道に導くと言う。一方ジョニィは、ジャイロの持つ受け継がれたものが最後に勝利を掴む、と言うし…。
つまるところ、このレースは、主義と主義のぶつかり合いなのだと思う。
「シビル・ウォー」(15巻・ゲティスバーグの夢)戦では、ジョニィが過去に捨てたもの…つまり「トラウマ」と向き合うことになる。つまり、兄・ニコラスの死と父親のジョニィに向けられた軽蔑の目である。この敵、「乗り越える試練」感があってクッソいいね。
ここでも「漆黒の意思」が登場する。ジョニィが精神的に追い詰められたからだ。
ここまで(タスクact3)は飢えの精神…すなわち「漆黒の意思」によってジョニィは成長した。タスクact3〜4ってどうなるんだってのが「ジャイロvsヴァレンタイン」。
ジョニィが追い詰められた時「漆黒の意思」になるのだとしたら、ジャイロ死亡時にもそうなっていいような気がする。でもならなかった。
それはジャイロの「Lesson5」を受け継いだからかな。ジャイロの死以降、ジョニィは漆黒の意思を持つ目にならない。ジョニィが言う、「受け継がれたものが最後に勝利を掴む」ってのが、act3→4への成長にピッタリ重なる。
この物語は、ゼロからマイナスへの物語。ジョニィの言う勝利は多分、レースでの優勝でも、遺体の入手でもなかったのだろう。青春時代から大人への成長の物語…まさにこれが、スティールボールラン・レースだった。主義と主義のぶつかり合いも、まさに青春時代のアイデンティティ確立のありかたそのもの。
読了後は、まるで一本の映画を観たような、そんな晴れやかな気持ちになった。所々に挟まるジョニィとジャイロの何気ない会話も癖になる。今までの「ジョジョ」とは一味もふた味も違う。しばらくは、この余韻から抜け出せそうにない…。
(ディエゴを最終的に殺したのがルーシーなのめっちゃ良いっすよね、1部のジョナサンの逆オマージュっぽくてめっちゃ良い)